歌舞伎というたのしい世界

歌舞伎ソムリエ おくだ 健太郎

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イラスト:瓜谷 茜

スキッフル読者の皆さまに、歌舞伎という日本の芸能のことを、少しばかりご紹介しようと思います。
歌舞伎と呼ばれる芸能は、関ヶ原の合戦とほぼ同じころ江戸時代のまさに幕開けに始まりました。

その成立においては、出雲(いずも)のお国(くに)という女性が中心的役割を果たしたようです。
彼女が侍を演じ、その侍が会いに通う、廓(くるわ:昔のナイトスポット)の女には男性が扮しました。

つまり男性と女性を逆転させたキャスティングです。
当時、個性的な着こなしや振る舞いで世間の注目を集める人たちのことを「かぶき者」と呼びました。かぶくは「傾く」と書きます。
まっすぐ、素直な立ち方でなく、傾いて立っている―世の中のスタンダードからは外れたユニークな存在を表すキーワード。それが「傾き」です。
この言葉に「歌舞伎」という当て字がいつしか定着したのです。

歌舞伎が大流行し、廓の女たちもたくさん公演に参加するようになりますが、そのぶん「世間によからぬブーム、影響を広めないか?」と偽政者からにらまれるようになります。
女の演者はすべて締め出され、若くてかっこいい美少年も歌舞伎への参加を禁止されてしまいます。成人男性が老若男女すべての登場人物をつとめざるをえなくなってしまうのです。

でもこの大きな制約にも当時の歌舞伎の人たちは、めげなかった、へこたれなかったのです。
本物の女性ではない、男が演じる女にしか表現できない美しさや色気があるはずだ、という芸の探求は「女形(おんながた)」という演技・表現を大いに発展させます。その相手となる男役もおのずと芸が深まっていく。
脚本のドラマとしての完成度、歌舞伎が演じられる舞台、観客をもてなす劇場など、環境の整備も進む―制約がきっかけとなって、より進化していった。ここが歌舞伎の凄いところです。

まさしく日本が誇る、極上のエンターテイメント。
それが歌舞伎です。名古屋では御園座(みそのざ)と言う劇場が毎年必ず上演しています。

ぜひ皆さまも歌舞伎という世界にアンテナを立ててみて下さいね。


おくだ 健太郎
1965年名古屋市生まれ。
大学入学で上京後、休学してのアメリカ生活でジャズの研究家との交流を通じて、自国の文化・芸術への関心が高まる。帰国後、歌舞伎座の立ち見席に通いつめ、芝居に肌感覚で親しむようになる。大学卒業後、劇場の同時解説イヤホンガイドの貸し出し従業員をへて、同解説員に。現在はイヤホンガイド解説員、雑誌やメディアでの著述、「おくだ会」と称するトーク会や観劇会など、さまざまな形で、歌舞伎の魅力を楽しく伝え、歌舞伎を通じた楽しい交流、人のつながりを育てている。趣味はジャズピアノ、旅行など。
ウェブサイトhttp://okken.jp


瓜谷 茜
1985年スペイン・サラマンカ生まれ。
2歳で東京へ移住。中学3年の時に歌舞伎の舞台を観て以来、歌舞伎や文楽などをモチーフに制作を始める。EVAのモデル名でショーやスチールなどの仕事をする傍ら、イラストをイベントや雑誌などに提供。主に若者や初心者に歌舞伎の楽しさをお伝えする「かぶこ」メンバーとして、様々なイベントを定期開催中。2017年からは、お子さんも楽しく歌舞伎に親しめるイベント「かぶこっこ」を開始。歌舞伎の紙人形芝居や塗り絵ワークショップなどを行なっている。
月刊誌Discover Japanおくだ健太郎氏コラム「歌舞伎キャラクター名鑑」に毎月イラストを掲載中。

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